MEGA Techは今回、耐久性と耐摩耗性に優れた超硬ドリルに関する最新のイノベーションについて取り上げたいと思います。新溝形状「Jフルート」およびチップポケット「RXシンニング」は切りくずを効率的に排出し安定した処理を実現するために開発されました。
刃先の円弧部を大きくすることで切削抵抗を低減し、また深穴加工時の溝部への切りくずの付着を減らします。製造業界における競争が激化する現在、高効率で費用対効果に優れた工具への需要が高まっています。切削加工に用いられるドリルは廃棄物の生成に関わる工具の一つですが、刃先の発熱により、先端部が摩耗したり、切りくずが焼き付いてしまうことで寿命が短くなります。
ドリル開発における重要なブレークスルー
超硬ドリルの開発・導入は製造業における金属加工に飛躍的な進化をもたらすものであり、非常に重要だといえます。かつては強度上の理由から切削加工の分野で超硬合金を使用することは難しいと考えられていました。ドリルは他の切削工具と異なり加工中に穴から切りくずを除去する必要があるため、超硬ドリルの開発には大きな困難を伴います。金属の穴あけ加工において特に重要なのが「ドリルが折れてはならない」という条件です。切りくずが排出されないとドリルは折れてしまいます。切りくずをスムーズに排出するには溝の幅を広げる必要がありますが、そうすると切削面積が減ってしまいます。つまり強度を高めるためドリルの
切削面積を増やすと同時に狭い溝からスムーズに切りくずを排出することが大切なのですが、これは非常に難しい課題です。また、切りくずが大きくなるほど溝に詰まりやすいのですが、しかしこの点については試作品の開発と評価を繰り返すことで切りくずが短く薄くなり、スムーズに排出されるようになりました。刃先のアーク状の部分を大きくすることで切りくずが短く薄くなり、スムーズに排出できるようになることが新たに確認されました。これは超硬ドリルの開発における最も重要なブレークスルーです。
超硬ドリルは製造業向け切削工具の重要なコンポーネントです。摩損や変形に対する高い耐久性、優れた放熱性と靭性、ダイヤモンドに次ぐ硬度といった物理的特性により、加工中にドリルが破損する可能性は大幅に低下します。このため高硬度の被覆材の切削加工に適しており、ステンレス鋼、チタン合金、耐熱鋼といったあまり一般的ではない鋼の加工にも使用されます。
深穴加工用工具を選ぶ
こうした課題を解決するのが住友電工ハードメタルが開発した最新の深穴加工技術です。高能率深穴加工用超硬ソリッドドリル「スーパーマルチドリルXHGS型」は、10D、12D、15D、20D、25Dおよび30Dの各サイズがあり、デッドゾーンのない精密な深穴加工という市場ニーズに対応しています。また切削時間の短縮と耐用年数の長寿化によりコスト削減を実現しました。従来品に比べて大きく改良されたデザインも革新的です。新開発の溝形状「Jフルート」と特殊シンニング形状「RXシンニング」により、切りくずの排出および連続切削の性能向上を実現しました。刃先のアーク状の部分を大きくすることで加工摩擦を減らし、すべての送り速度で深穴加工時の溝部への金属の付着を低減します。また住友電工ハードメタル独自のドリルコーティング技術「DEXコート」で強化されたコーティングは耐チッピング性に特に優れており、欠けたり折れたりしにくく長寿命です。
特長・用途
スーパーマルチドリルXHGS型は、深穴加工の更なる高効率化のため、高いドリル強度と安定した切りくず処理を実現した深穴加工用ドリルです。
- 深穴加工時の安定した切りくず処理を実現する新溝形状(Jフルート)
- 刃先径の20倍の深穴をvf = 1000mm / minの高能率で加工(刃径φ5 S48C相当)
- 特殊シンニング形状「RXシンニング」の採用で高能率加工時の切削抵抗を低減
長寿命化を実現
- ドリルコーティング技術「DEXコート」により工具の長寿命化が実現し、また多様な被削材に対応することが可能になりました。
- 従来品に比べて切りくずの排出が改良されました。切れ刃(主マージン)から副マージンまでの距離が短くなり、切削開始時からびびりのない安定した加工が実現しました。これにより工具を長期間、安定的に使用できるようになります。
- MQL(セミドライ)および2液ミスト(水・油同時吐出)の双方に対応した環境配慮型の製品です。
Article by: Sumipol Corporation Limited & MEGA Tech